スローセックスで深める愛

1970年代以降、世界的にファーストフードが大流行しました。わが国では71年に銀座三越に1号店をオープンしたマクドナルドが大ヒット。当時は店内での飲食スペースがなく、持ち帰り専門であったにもかかわらず、連日行列のできる人気店となりました。同時期にケンタッキーフライドチキンなど、さまざまなフランチャイズチェーンがオープンし、外食産業の中核へと育っていきます。早くて手軽なファーストフードは現在も人気がありますが、一方で、「スローフード」も見直されています。

単に早くて安いだけでは必ずしも食を楽しむことができない、地域に伝わる食材や料理をゆっくりと味わい楽しむことが大切だと考えられるようにもなってきています。どちらが良いという問題ではありませんが、「スロー」を見直す風潮はますます強くなっているようです。セックスについても、特に熟年カップルの間で「スロー」志向が生まれてきています。「中身の濃いもの」を求めるようになったからでしょう。

セックスに求めるものが「量」から「質」へと変化してきた!?

高度成長期は「結果」が求められる時代であり、性生活には「回数」が重視され、週に何回しているか、一晩に何回イカせたかが目的化しました。女性の間でも「何人と寝たか」を競いあう風潮も生まれ、女子学生やOLたちの中には「誰とでもタダで寝る」人も現れます。セックスはとてもカジュアルになり、性交に対する価値観が下がったとも言えるでしょう。

バブル崩壊やリーマンショックを経て社会の価値観が変化したためか、現代は「質」を求めるようになりつつあります。タダで体を提供していた女子学生たちはお金を要求する「援交」に走り、平気で売春をするようになりましたが、半面、高い貞操観念の女子たちも復活しました。「セックスするなら愛を感じられる相手と」、と考える人が増えています。

中高年のカップルにおいても、単に「射精」や「オーガズム」に終わらない、「快楽」と「愛」を同時に叶えられる性生活が求められるようになってきました。そうした志向性にマッチしたのが、スローセックスです。

ピストン運動だけがセックスではない!?

スローセックスとは、文字通り「ゆっくり」とした性交です。男性が必死にピストン運動を繰り返し相手がイクまで自分は我慢する、というような、かつては「常識」だったものから解き放たれた自由な性行為とも言えます。わが国で広めたのはセックスカウンセラーのアダム徳永さんですが、元はイタリアが発祥だとも言われています。

これこそが「本質」というような定義があるわけではありませんが、「挿入至上主義」「オーガズム至上主義」とは逆のものです。「スロー」の名の通り、前戯も挿入も焦らずゆったりと行い、必ずしも「イク」ことは求めません。肝心なのは「愛」を感じられ、幸福感に浸れること。高齢になればなるほど、そうした性行為の方が体力的にもマッチします。

挿入と射精、オーガズムに縛られた性生活から自由になって、スローセックスを楽しむ熟年カップルが増えています。「スロー」は夫婦円満の秘訣とも言えるようです。寝台列車のゆったりとした旅は、そのきっかけともなるでしょう。